代表挨拶 

 外国から移住してきた人々や、その子ども世代が移住先の社会で直面する困難には様々なものがあります。しかしながら、日本社会ではまだまだ外国からの移住者が抱える困難への視点が乏しいのが現実です。

 私たちの研究チームでは、外国にルーツを持つ子どもたちが抱える困難について、様々なデータを用いて分析し、不利の経路を解明することを目指しています。私たちの研究成果が、子どもたちのために有効な支援や施策の検討に少しでも役立ち、いつの日か、すべての多様な背景を持つ子どもたちが自分らしく生きられる社会の実現につながることを願っています。

2023年9月 研究代表 山本直子

(東洋英和女学院大学)


研究概要

 本研究は、子どもの貧困を多方面から研究する科研費研究プロジェクト『令和4(2022)~令和8(2026)年度科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)貧困学の確立:分断を超えて』の中の研究班の1つである。主な目的は、外国にルーツを持つこと(移民であること)と、貧困に関連する要素が複合的に作用することによる子どもへの影響を明らかにすることである。

 近年、日本では外国にルーツを持つ子どもが急増し、多様化も進んでいる。これまでの移民研究では、外国籍者の低収入傾向や労働市場おける不利とともに、その子どもたちの学校不適応、低進学率、いじめ、親子関係の悪化などが指摘されてきた。こうした問題群は、貧困世帯の子どもについて明らかにされてきた問題群と重なる部分も多く、貧困であることと、外国にルーツを持つことに関連する作用の結果であると推測される。

 本研究では、外国にルーツを持つことと貧困の交互作用を明らかにするとともに、家族の状況、居住地域の特性(貧困率、都市の規模や外国人居住率)、地域や学校における外国人支援施策やサービスの充実度、エスニック・コミュニティの有無などが媒介することによって、子どもへの影響がどのように緩和/強化されるかを検証し、外国にルーツを持つ子どもの不利のメカニズムを解明する。