DATA ARCHIVE- アメリカ

アメリカ- レポート

目次:

(1) アメリカ移民数(移民人口比率)の推移

(2) 移民の子どもの状況

a. アメリカにおける移民の子どもの定義

b. 移民の子どもの数と割合、及び推移

c. 移民グループの子ども貧困の現状

(3)移民の子どもの世帯の状況

d. 学力・就学状況

(4)移民・外国ルーツの子どもに関する政策


(1) アメリカ移民数、及び移民の割合の推移

 国連人口部の2020年半ばのデータによると、世界全体では、米国は他のどの国よりも多くの国際移民を受け入れており、ドイツ、サウジアラビア、ロシア、英国の4カ国の移民数を合わせた数よりも多い。米国の人口は世界総人口の約5%を占めるが、世界全体の移民の20%近くが米国に居住している。

 図1のアメリカ移民数、及び移民の割合の推移(1850-2022年)により、米国の国勢調査で出生国に関するデータを収集し始めた最初の年である1850年には、220万人の移民がおり、総人口の10%近くを占めていた。1860年から1920年の間、移民が人口に占める割合は13%から15%の間で推移し、ヨーロッパからの移民が多い中、1890年には14.8%とピークに達した。1921年と1924年に制定された移民制限法により、永住移民はほとんど北欧と西欧からの移民に限定された。世界大恐慌と第二次世界大戦の勃発が相まって、東半球からの新規移民は激減した。外国生まれの割合は着実に減少し、1970年には過去最低の4.7%(960万人)を記録した。1970年以降、主にラテンアメリカとアジアからの移民が増加したため、移民の割合と数は急速に増加した。2022年、移民は米国総人口の13.9%を占め、過去最高だった1890年の14.8%には及ばず、2019年の13.7%をわずかに上回る。

(2)移民の子どもの状況

a. アメリカにおける移民の子どもの定義

アメリカにおいて「移民」とは、出生時にアメリカ市民権 (U.S. citizenship) を得てはいないが、通常の滞在地 (usual place of residence) が同国である者を幅広く意味する概念である。移民の子どもとは、両親のうちどちらか1人が外国生まれである18歳未満の子供を指す。

b.米国移民家庭の子供たち(年齢層別、1990年と2022年の比較)

米国に定住する移民や難民の数は、ここ数十年で劇的に増加し、従来は移民の目的地ではなかった多くの州に分散している。移民家庭の子供の圧倒的多数(2022年には87%)は米国生まれである。図2は、1990年から2022年の間に、移民の子供の数と割合が、全米でどのように変化したかを示している。

図2 Source:

Migration Policy Institute (MPI) tabulation of data from U.S. Census Bureau, 2021 American Community Survey (ACS) and 1990 Decennial Census; 1990 data were accessed from Steven Ruggles, J. Trent Alexander, Katie Genadek, Ronald Goeken, Matthew B. Schroeder, and Matthew Sobek, Integrated Public Use Microdata Series: Version 5.0 [Machine-readable database] (Minneapolis: University of Minnesota, 2010).


c.移民グループの子ども貧困の現状

 図3は、家庭所得が連邦貧困線の2倍未満の家庭で暮らす18歳未満の子どものうち、外国生まれの家庭または米国生まれの家庭の子どもが占める割合である。移民家庭の子どもは、親がフルタイムで一年中雇用されている可能性が高いですが、米国ネイティブ家庭の子どもと比較して、移民家庭の子どもは低所得世帯で育つ可能性が高い。(THE ANNIE E. CASEY FOUNDATION2018)。

 図3に示すように、移民家庭の子どもたちは、ネイティブ家庭の子どもたちよりもはるかに高い貧困率を示しているが、近年、アメリカにおける移民の子どもの貧困率は低下傾向である。貧困減少の背景には、過去30年間にわたるアメリカのセーフティネットの拡大、大不況後の景気回復が含まれる。また、連邦政府、州政府、地方政府が公衆衛生危機の経済的影響を鈍らせるために、大規模な所得支援、給付プログラムの拡大が導入したパンデミックによる支援プログラムには、3回にわたる景気刺激策(Stimulus Payments)と、補助的栄養補助プログラム(Food Stamp)の拡大、子ども税額控除、失業保険の拡大が含まれる。既存の公的給付と比較すると、これらの新規または拡大されたパンデミック・プログラムの多くは、移民家庭を含む米国家庭の受給資格を拡大した。貧困の減少は、移民の人口特性の変化とも相関しており、移民の家族の経済的な福祉を促進する要因となっている。過去10年間で、高校教育を受けていない移民成人の割合が減少し、一方で大卒者の割合が増加した。同様に、英語が堪能な移民の割合も増加した(Batalova and Fix 2023)。

(3)移民の子どもの世帯の状況

d 学力・就学状況

 アメリカでは、3人に1人以上の子どもが一人親家庭で暮らしている。移民家庭の子どもはひとり親家庭で育つ割合はネイティブ家庭の子どもより高いである(図4)。また、移民家庭の子どもたちは、ネイティブ家庭の子どもたちに比べて、両親の教育水準が高校卒業未満に止まっている可能性が高いである(図5)。しかし、この統計は2014年から2つの家族グループ間の格差が縮小している。2014年には、両親が高校を卒業していない子どもの割合は、移民家庭で26%だったのに対し、ネイティブ家庭は7%だった。2021年には、この格差は移民家庭の子どもの18%、ネイティブ家庭の子どもの5%に縮小した。  過去10年間でアメリカの学校における移民の子供の数の著しい増加は、K-12の教育者に対して、限られた教育しか受けられず、英語力もほとんどなく、またはトラウマを抱えている可能性のある生徒に対応する能力を拡充するという課題である。図6により、移民家庭の子どもの16%が言語的に孤立した家庭で暮らしている。英語を話すのが困難な子どもたちは、学校と労働市場の両方でより大きな課題に直面する可能性がある。学校関係者は法律により、子供の英語に関する施設を評価し、必要に応じて子供の英語を改善するための特別な指導などのサービスを提供することが課題である。

 表1は、米国における一般的な高校生(14歳から17歳)の子供の就学率と達成度を示している。2021年には、少なくとも1人の親と同居している子どものうち、ほとんど全員が幼稚園から高校までの学校に就学している。しかし、最近入国した子どもの8%は、高校に入学しておらず、高校も卒業していないことがわかる。世帯主がいない子どもたちのグループには、すでに大学に入学している14歳から17歳の若者や、未就学が高校から卒業している14歳から17歳の若者が約58,000人含まれている。最近の両親と同居していない移民の約16%(約5,300人)が高校に入学しておらず、高校を卒業していない。14歳から17歳の青少年で、親が世帯にいる場合といない場合を合計すると、最近移民した者の9%、長期滞在移民とネイティブ生まれの者の両方で3%が、高校に在籍しておらず、高校を卒業していない。

(4)移民・外国ルーツの子どもに関する政策

Aセーフティーネットの拡大

2020年初頭のCOVID-19パンデミックの発生は、世界と同様、米国の社会・経済生活を大きく変えた。米国議会は同年と翌年に法律を制定し、パンデミックの経済的・健康的影響への対応に取り組む連邦政府、州政府、地方政府に資金を提供した。連邦政府もまた、米国生まれ家庭、移民の家庭を直接支援するために介入した。この支援には、3回にわたる景気刺激策の支給と、補助金などのプログラムの支給額の増額、場合によっては対象者の拡大が含まれる。たとえば、栄養補助プログラム(SNAP)、失業保険補償、緊急賃貸・光熱費補助、勤労所得税控除(EITC)、児童税控除(CTC)などである。2021年後半、政府の援助によって移民における貧困全体と子どもの貧困が急減したことである。

B教育政策の展開

早期ケアと教育サービスについて、ニューヨーク市児童福祉局(ACS)は、米国最大の公的資金によるチャイルドケアシステムを運営している。ACSは、契約している早期ケア・教育プロバイダーのシステムであるEarly Learn NYCを通じて、6週間から4歳までの子どもたちにサービスを提供する。この制度は、子どもたちの学習生活の中で最も重要な時期に、社会的・知的発達を支援する。Early Learn NYC は、年間を通じて1日8~10時間のサービスを提供し、家庭を支援している。子供たちの家族を精神的にも肉体的にも強化するために、メンタルヘルスや二重言語、栄養サービスなどの重要なサポートを提供する。それ以外、移民の家庭に英語教育、成人向け教育プログラム、放課後学校制度を提供する。

参考資料と文献:

・図1、2出典:Migration Policy Institute (MPI)

https://www.migrationpolicy.org/article/frequently-requested-statistics-immigrants-and-immigration-united-states#immigrants_now_historically

・図3:Population Reference Bureau, analysis of data from the U.S. Census Bureau, Census 2000 Supplementary Survey, 2001 Supplementary Survey, 2002 through 2019, 2021 American Community Survey.

https://datacenter.aecf.org/data/tables/118-children-living-in-low-income-families-by-family-nativity#detailed/1/any/false/2048,1729,37,871,870,573,869,36,868,867/78,79/451,452

・Jeanne Batalova and Michael Fix、2023、Understanding Poverty Declines among Immigrants and Their Children in the United States、Migration Policy Institute.Research: Understanding Poverty Declines among Imm.. | migrationpolicy.org

・図4Children in single-parent families by family nativity | KIDS COUNT Data Center (aecf.org)

・図5Children whose parents all have less than a high school degree by family nativity | KIDS COUNT Data Center (aecf.org)

・図6:Children who have difficulty speaking English | KIDS COUNT Data Center (aecf.org)

・Julie Sugarman 2023「Recent Immigrant Children: A Profile of New Arrivals to U.S. Schools」Research: Recent Immigrant Children: A Profile of .. | migrationpolicy.org

・Understanding Poverty Declines among Immigrants and Their Children in the United States (migrationpolicy.org)

・MOIA Resource and Referral Guide